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〈ベジタリアンの秘め事・中編〉多様化する菜食と肉食の自然破壊

未来の国からパラダイムシフトの朝 #25
Words by Daisuke YOSUMI
Reading Time:6m19s
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たんぱく源を魚に頼るぼくは、家畜の肉は食べないが、時々ハンターの友人から回ってくる鹿などの「野生動物の肉」に限っては感謝していただくこともある。とはいえ、年に一度あるかないかだが。

ちなみに、乳製品はほとんど摂らないが、鶏の卵はエシカルな手法で飼育されたものであれば食べる。

ニュージーランドのぼくの周りには、「基本は植物由来がベースだが、天然魚や野生の肉(鹿や猪など)なら時々OK」という食習慣の人たちがけっこういて、彼らは「フレキシ・タリアン」と自称する。「フレキシブル」と「ベジタリアン」を合わせた造語だ。

〈我が家の無農薬畑で採れる野菜。この量のサラダを毎日食べていると、体は絶好調で病気ナシ〉

野生動物たちは当然〝自由な環境と自然の食べ物〟で育っている。つまり健康な肉だからよし、とする考えだ。

そして、劣悪な環境のもと、農薬まみれの穀類と抗生物質漬けの飼料で〝製造〟された家畜の肉は、なるべく体に入れたくないという、彼らなりのメッセージとも言えるだろう。

なお、ニュージーランドのスーパーには、「フリーレンジ=Free Range(放し飼いの意)」の認証を得た豚や鶏や卵、「グラスフェッド=Grass Fed(牧草のみで飼育の意)」の牛肉が並び、ヘルシー志向の飲食店のメニューでも頻繁に目にする。

狭い家畜小屋で詰め込み式の「工業型畜産」に比べて生産性が下がることから、通常よりも若干高価。だが、味も良く栄養価も高いので人気がある。ぼくに言わせると、一般的に流通する昨今の肉の安さは異常だ。

なお、野菜や果物、卵や牛乳のオーガニック認証は、ほとんどの大手スーパーで買うことができるのに対し、肉のオーガニック認証はさすがのニュージーランドでも、オーガニック専門店や意識の高いレストランでしか見かけない。
飼料すべてを有機にして、ストレスフリーの環境で食肉を育てる手法は、なかなか難しいのだろう。

ちなみに、ぼくが好むオーガニック&フリーレンジの卵は、通常の「ケージド=Caged(カゴのなか育ちの意)」に比べると高価だが、うなるほど美味しいのと、その安全性と栄養価の高さからじゅうぶんにその価値があると言い切れる。

なお、「フレキシタリアン」や「フィッシュベジタリアン」以外にも、卵と乳製品は摂取する「ラクトオボベジタリアン」など、ベジタリアンの種類は多数あり、マクロビオティックを好む人や宗教上の理由から動物を食べない人たちを含めると、10以上あるという。

その中でも、もっとも厳格とされるのが、アーティストやクリエイターといったトレンドセッターたちがこぞって発信し、今もっとも注目を集める「ビーガン」だ。

彼らは、肉や魚はもちろん、卵や乳製品、蜂蜜さえも体に入れない(蜂を動物種とみなすため)。革製品などの、動物を使った衣類や小物も身につけない。

前述のようにぼくは、「ペスコベジタリアン、時々ビーガン」なので純粋なビーガンではないが、彼らの健康志向や環境意識、倫理感には強く共感する。ビーガンはみな環境意識が際立って高く、真のナチュラリストが多いのが特徴だ。

彼らが「完全菜食主義」にこだわる、理由のひとつにまず「健康」がある。ビーガンは肥満とは無縁だし、ガンや心臓病、成人病のリスクは圧倒的に低い。そして、ビーガンにはとても穏やかな人が多いのが興味深い。

昔ならば、ロックミュージシャンになって社会的メッセージを発信していたような人たちが、最近では自身のフードライフを通して自己表現するアーティストや活動家が増えているように感じる。

なにを隠そう、ぼく自身がそういう自覚をもって、毎日の食を選び、日々のライフスタイルを送っている。

〈ヘリコプターから撮ったニュージーランドの典型的な牧場風景。一見すると”大自然風”だが、ヨーロッパ人が移民してくる前は見渡す限りの原生林だったことを忘れてはいけない〉

ぼくも、肉を食べず「時々ビーガン」という食生活になってから実際に、さまざまな健康上の恩恵を享受している。

そして、ビーガン活動家たちが声を大にして主張するのが、環境保護だけに限らず、人類が抱える諸問題との関連。特に彼らは、動物愛護的な視点を持って発言することが多い。肉食の人たちがペットとして大切にする犬や猫やインコも、牛や豚も鶏も同じであるという主張である。

ご存知だろうか。
世界中で増え続け、いまや異常な数となった家畜の呼吸や排泄物と、畜産関連業が年間で排出している温室効果ガスの量は、車や飛行機といった全世界の陸海空の交通手段と同じとなっていることを。

さらに、ハンバーグひとつ作るために、面積にして30畳分の熱帯雨林を失っているという研究結果もある。水不足で多くの人命が奪われているなか、「1人前の牛肉」を生産するのに2Lのペットボトルで約2,200本分の水が使われているという。

そして、飢餓に苦しむ途上国を尻目に、家畜に与えられている穀物は、10億人分を養える量だという。今の過度な肉食習慣を、各地域の伝統的な食生活に戻すことで、飢餓がなくなるいう学者もいる。

ちなみに、ぼくがこういった「過剰な肉食が、環境・社会・道徳面において引き起こす事実」を知ったのは、ここで暮らすうち自然に肉を食べないようになった後である。そして、この不都合な真実を知ってしまった以上、より肉を食べる気が失せてしまったことは言うまでもない。

▽シリーズ《ベジタリアンの秘め事》
〈前編〉ぼくが肉を食べなくなったわけ
②〈中編〉多様化する菜食と肉食の自然破壊
〈後編〉伝統的な和食が世界を救う

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四角大輔|Daisuke YOSUMI

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