モバイルボヘミアンとは(後編)
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この原稿を書いているまさに今日、20日弱の日本への旅から、ニュージーランドの湖畔の森に帰宅(2016年2月現在)。
前回は、セカンドホームとして使っている、ビーチに停めたキャンピングトレーラーの中で執筆していたことを考えると、この1カ月間、自宅には1週間ほどしかいなかったことになる。
さて、これまで、〝ノマドライフ〟と〝デュアルライフ〟の違いや、誤用されることが増えた〝ノマド〟の歴史について述べてきた。今回はいよいよ本題、〝モバイルボヘミアン〟について書いてみたい。
プロフィールで紹介されるぼくの肩書きに多いのは次の3つ。
①ノマド、②ノマドワーカー、③グローバルノマド。
①の表記は、3文字で完結するため、文字数に制限があるとき便利だし、「総称」としてとらえると間違いではないのでOK。
しかし、②で紹介される場合は、いつも否定させていただくことになる。
これまでも書いてきたとおり、〝ノマド〟とはライフスタイルであり、ワークスタイルに限られた用語ではない、というのがぼくの解釈だからだ。
そして、ニュージーランドを軸に、頻繁に国境を越え、日本を含む複数の国を移動しながら仕事をしていることから、③がもっともしっくりくる。
自分でも、この名称を使うことが多いかもしれない。

〈Photo. Daisuke Yosumi in NZ〉
では、〝グローバルノマド〟と〝モバイルボヘミアン〟の違いとは何か。
両者とも、「単なる旅人ではなく、国境を越えて移動しながら仕事をする人」、「移動が手段ではなく、生活そのものになっている人」という要素は当てはまる。
〝モバイルボヘミアン〟という概念において、重要なのは次の点なのだ。
「遊び、仕事、生活に垣根がなくなり、旅そのものが仕事と生活になっている人」
たとえば、ぼくにとっての究極の旅のスタイルである、フライフィッシング冒険やロングトレイル登山から派生した、雑誌での連載や寄稿、冒険トークライヴ、アウトドアブランドのアンバサダーや、フィッシングギアや登山ウェアの開発、体を鍛えるためのトレーニング法のコンテンツ発信などがそれにあたる。
ニュージーランドで営む自給自足ベースの〝森の生活〟と〝移動生活〟そのものがコンテンツとなり、ライフスタイルや旅の講演や、執筆につながることが増えた。
湖畔の森で実践しているオーガニックライフの発信を見た企業から、自然派プロダクトのブランディングやアンバサダーの仕事をいただいたり。
ライフワークとして続けてきた、起業家やクリエイターの育成活動がきっかけで、さまざまなオファーが舞い込むようになったり。
ただし、これらの仕事を受ける際、「仕事相手を好きと思えること」、「楽しいこと」、「長期間に渡り場所の制約を受けないこと」という点を判断基準にしている。
これらを守ることで、仕事がストレスとは無縁のものになる。
その結果、モチベーションとクリエイティビティが高まり、必然的に仕事のクオリティも向上するからだ。
ちなみに、ぼくは場所の制約を受けない仕事を〝モバイル・オキュペイション=持ち運び可能な職業〟と呼ぶ。
辞書によると〝ボヘミアン〟とは、「社会の習慣に縛られず、自由気ままに生活する人」とある。
いい言葉ではないか。
〝モバイルボヘミアン〟という言葉の概念、理解していただけただろうか。

本記事は、MacFan2016.4月号掲載の連載「モバイルボヘミアン~旅するように暮らし、遊び、働く」05に加筆修正を加えた完全版です。
(当サイト掲載|2016年7月24日)