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マイ・ワークスタイル|物技交換(後編)

モバイルボヘミアン~旅するように暮らし、遊び、働く #10
Words by Daisuke YOSUMI
Reading Time:6m4s
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ぼくが提唱している「お金を介さないワークスタイル」。

我が人生をよく思い返してみると、その歴史はとても古かった。

前回の中編で、ニュージーランド移住直前に、愛用していたアウトドアブランドと結んだ「道具やウエアとぼくのスキルの交換」が、初の〝物技交換契約〟だったと書いたが、より古いものがあったことを思い出したのである。

あれは確か2000年だから、今から20近く前のこととなる。
当時はまだレコード会社の若手で、アシスタントプロデューサーとして修行をしていた頃の話だ。

小学生のころから愛用していた某大手釣り具メーカーが開催した、「フライフィッシングのテスター(セミプロ)」を募集するオーディションを受けたことがきっかけだった。

書類審査、エッセイ、面接、実釣テスト、キャスティング試験、といったハードルを突破し、幸運にも、300倍という倍率を勝ち抜いて合格。

現在では、アウトドアアスリートとして、複数のアウトドアブランドのサポートを受けられているが、事実上その「釣り具メーカー」それが人生初のスポンサー契約となった。

ただ問題があった。

〈Photo. Shotaro KATO / Model. Daisuke YOSUMI in NZ / 今では愛用する登山ウエアとギアの大半が物技交換で得たモノばかり〉

当時はソニーミュージックの正社員として勤務しており、社内規定では「副業禁止」となっていたのだ。

なので、現金を受け取らない形で物品提供のみ、とさせてもらうことに。
さらに物品授与も厳密には「収入扱い」となってしまうことがわかったため、「貸与」という形態をとらせてもらうことになった。

メディア露出する際に、その道具とウエアを身につけることで宣伝協力となる。

これまで自腹で購入していた、喉から手が出るほど欲しい道具やウエアを、無償で使うことができるという〝物技交換〟が、意図せず成立した瞬間である。

当時は、「物々交換」や「スキル交換」といった意図はまだ頭になかった。

当然、社会的にもそういった概念はまったく浸透していない。

スポンサーとぼくにとって、「最適な方法を模索した結果、そうなっただけ」ということになる。

その経験があったからこそ、移住直前2009年の、某アウトドアブランドとの契約時に、自然に〝物技交換〟を提案できたのだと言えるだろう。

それ以降、今日に至るまでの9年間、ぼくは意識的に、お金を介在させない契約や取引を増やしていくようになった。

決して好景気とは言えない現在の日本経済において、(企業にとっては負担が少ないためか)お金よりも物品提供の方が喜ばれるということを、その中で学ぶことができた。

〈Model. Daisuke YOSUMI in the North of Thailand / スキル交換で無償使用させていただいている「Global Wifi」のおかげで、3G回線が飛んでいればどこにいても仕事ができる。タイ北部のこんな山奥でも電波を拾ってくれるのだ〉

最後に、ぼくが〝物技交換〟にこだわる本当の理由を述べたいと思う。

為替を見ればわかるように、お金は秒単位で価値が変化している。

日本円ベースで考えると、テロや社会的事件が起きたり、サプライズを伴う経済指標が発表されるたび、日本円の価値は恐ろしいほど上下する。

そして何より怖いのは、過去20年、複数の国で起きた、国家破産に伴うハイパーインフレである。

これは、ある日突然、国が破産宣言をすることで、その通貨の価値が百分の一や、千分の一にまで一気に下がることである。
これは決して遠い国の話ではない。

過去30年の間に、隣国の韓国やロシアで、欧州では数ヵ国で起きているし、当然、日本でも過去にあった。

そして、現時点で日本は、世界一の債務超過国という事実もある。つまり、いつ財政破綻してもおかしくない、ということ。

つまり、
お金や株などの〝紙モノたち〟は突然、文字通りの「紙切れ」になるリスクがあることになる。
でも〝実態が伴うモノ〟の価値がゼロになることはない。

多くの物品が市場で取引されているが、それらのモノの価値がゼロのなることもない。

だからぼくは、自分のスキルを、お金ではなく「ぼくが心から、使いたい、欲しいと思うモノ」に変換するのだ。

だが、モノはいつか朽ち果ててしまう。そうなる前に、壊れたり失くしてしまうことも多々あるだろう。

だが、「体験」や「スキル」といった〝体に刻み込まれた目に見えないモノ〟は一生消えずに残る。

だからぼくは、自分が社会に提供できるスキルを、物理的なモノ以上に「宝となる体験」や「さらなるスキル」に変換するのである。

話しは少し変わってしまうが、ぼくがいつも若い世代に「モノではなく、体験にお金を使え」と言っている理由はここにあるのだ。

ぼくの影響とアドバイスを受けて、ぼくの周りでは物技交換に挑戦する人がどんどん増えている。そして彼らの多くがハッピーになっている。

あなたもぜひ、このワークスタイルに挑戦してみては?

▽シリーズ《マイ・ワークスタイル|物技交換》
マイ・ワークススタイル|物技交換(前編)
マイ・ワークススタイル|物技交換(中編)
マイ・ワークスタイル|物技交換(後編)


本記事は、MacFan2016.9月号掲載の連載「モバイルボヘミアン~旅するように暮らし、遊び、働く」10に加筆修正を加えた完全版です。
(当サイト掲載|2017年1月)

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