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#01 夢をブレさせない3原則

Lake Edge Life ニュージーランド移住
Words by Daisuke YOSUMI Photographs by Daisuke YOSUMI
Reading Time:6m48s
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フライフィッシャー紙面

湖のほとりに居を定め、いつでも好きな時に鱒釣りに出かける。そのために立てた目標は、「30代での国外移住」。なぜ移住なのか?どうすればできるのか?釣り人が夢を叶えるための体験的セルフプロデュース術。

本記事は、Fly Fisher2010年6月22日号掲載の連載
「Lake Edge Life ニュージーランド移住」01の完全版です。
(当サイト掲載|2015年5月25日)

なぜニュージーランド?

なぜニュージーランド? 僕はこの質問をこれまでに数え切れないほど受けてきた。詳しく話し出せばきりがないが、結局は3つのシンプルな回答に行き着く。

「大きな鱒が釣れること」「美しい湖があること」、そして「人生は短く一度しかないこと」。

2009年12月、念願だった永住権を取得。それを受けて、プロデューサーとして勤務していたレコード会社を退社し、15年間働いた音楽業界の仕事に完全に区切りを付けた。

そして翌月すぐにニュージーランドへ飛び、北島中央部のある湖の畔に停めたキャンピングトレーラーでキャンプ場生活を始めた。

きっかけは、親友からの手紙と写真

きっかけは今から20年以上、遡ったある日のこと。

大学生だった当時、地元大阪の一番の釣り仲間でもあった親友トシゾーが、突然ニュージーランドへ留学すると言い出した。お世辞にも語学留学などというアカデミックな行為からはほど遠いタイプの男だった。

「いったい何しに行くんだ?」と追求すると、「フライフィッシングを学ぶため」と真剣な眼差しで答えるトシゾー。

「なに…!それは行った方がいいな!!」と、動揺しつつも反射的に即答するぼく。

それまで、自分はニュージーランドのことをまったく知らなかった。

だが、海を渡ったトシゾーから頻繁に手紙と写真が届くようになると、この国の豊かな自然とフィッシングフィールドとしての魅力、そして目がさめるほど透明な水をたたえる湖の存在が、心と身体に急速に植え付けられていった。

それはまるで、ある種、心地よいウイルスに侵されていくような不思議な感覚だった。

フライフィッシングはやっていたが、将来住みたいと思っていたのは北海道。
しかし、彼が送ってくる美しい湖と金属的な輝きを放つ鱒の姿は、いつの間にかぼくの〝夢の地〟が、北海道からニュージーランドに書きかえられてしまっていた。

一度もニュージーランドに行ったことがないのに関わらず、だ。

 

湖に暮らすことは決めていたので、この壁に貼った地図の中の「湖畔の街」すべてにチェックマークを入れ、15回通ってすべての湖畔の街を訪れた。地図を眺めるだけでも、そこから多くのイメージを得られることもあり、ぼくは地図が大好きだ。

湖に暮らすことは決めていたので、この壁に貼った地図の中の「湖畔の街」すべてにチェックマークを入れ、15回通ってすべての湖畔の街を訪れた。地図を眺めるだけでも、そこから多くのイメージを得られることもあり、ぼくは地図が大好きだ。

夢を忘れないこと。ただそれだけ。

「カラーバス効果」という言葉をご存知だろうか。街を歩く時に「赤」という色を意識しておくと、その色が驚くほど多く溢れていることに気付く、という現象だ。

頭に1本のアンテナが立っているとしよう。

書店に入る時、ラジオを聴いている時、そして通勤時間、とにかく起きている間はずっと、世の中の「ニュージーランド……」という単語にその都度反応するように心掛けるのだ。たとえばこんなこともある。「ニュー…」という言葉が視界の端に入ってきて振り向くと「ニューヨーク」だったり、「ニューカレドニア…」という会話に思わず反応したり。

こんな、数え切れないくらいの無駄打ちを毎日繰り返しながらも、ニュージーランドの知識は確実に蓄積されていった。関連の本、雑誌の特集、ニュース、番組、映画、イベント、アート、音楽などはもちろんすべてチェック。月刊『フライフィッシャー』(当連載掲載誌)で特集されたニュージーランド釣行記も漏らさずファイリングした。

また、自分は人との会話にもこの種のキーワードハンティングを意識的に取り入れた。誰かに会ったら「ニュージーランド移住が夢なんです」ということをとにかく伝えるのだ。それは初対面の人でも変わらない。

当然、「この人はなぜここまで熱心にニュージーランドの話をするんだ?」と不思議がられることもあるが、そこでひるんではいけない。

挫けずに続けていると、根負けするのか、「昔、ニュージーランドに行ったことのある友人がいるよ」「向こうに暮らしている知人がいる」「そういえばあの雑誌にニュージーランドの記事が載っていたよ」という反応が得られるようになり、情報が集まるようになってくるのだ。

一旦誰かの紹介を受けることができたなら、そこからは先方が返事に困るくらいの長文の手紙やメールを送らせてもらう(申し訳ありません!)。

ちょっとした紹介から、細い糸をたぐるように人から人に繋がり、永住権取得に一気に近づくような大きな出会いに何度か遭遇した。

移住前、本棚の一番目立つ場所に作られた「NZ関連本」コーナー。近くには「永住権申請までにやること」を数年分張り出し、進行ぐあいをいつもチェックしていた

移住前、一つの本棚すべてを「NZ関連本」が埋め尽くした。本棚上部には数年分の年表を張り出して「永住権申請までにやること」の時系列と進行ぐあいをいつもチェックしていた。

自分の周りを関連のアイテムで取り囲むことも実践した。

ビジョンメイキングともいわれるが、リビングには現地の景色を彷彿とさせる絵を、ベッドの上にはニュージーランド全土の地図を、携帯電話やコンピューターの待ち受け画像には写真を貼り付ける。

本棚の一角すべてを埋め尽くすように〝ニュージーランド・コーナー〟を設置。その本棚上部には移住するまでの数年分のプランニング表も貼った。会社のデスクには美しいニュージーランドの風景写真のポストカードを並べ、BGMはニュージーランド・ミュージック。

刺激が多く利便性の高い東京で、安定したサラリーマンをやっていると「このままの生活も悪くないな……」と決意を揺らがせるような誘惑も多い。それに負けないために、24時間365日、家でも会社でも、常にニュージーランドを忘れないための仕組みをライフスタイルの中に構築していった。

ぼくは、昔から赤面症や対人恐怖症に悩まされていたため、自分に自信を持てなかった。

いわゆる学校の勉強における記憶力も決していい方ではなかった。
だから、①夢をイメージする、②それを紙に書く、③それを人に話す、という3つの行為を習慣化させて、15年以上、ただ愚直なまでにそれを実行し続けた。

「夢を忘れないこと」。
大きな目標を実現させる手段は、実はとてもシンプルなのだと思う。

そしてぼくは、「10年以上の年月をかければ実現不可能なことはない」と信じている。
短期間で結果を出すことを求められる現代の社会において、これは大切な〝事実〟だと思っている。

Fly Fisher(フライフィッシャー)2010年8月号表紙

出版社|つり人社

Fly Fisher|フライフィッシャー

2012年8月号 No.199 2010年6月22日発売

定価1234円(税込)

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